[作業船]村上正保
他社の船には絶対に負けない!
毎日変わる自然を相手に、成長を実感できる。
風力搬送船 AP2100良成丸 船長
村 上 正 保 Masayasu Murakami
普通科高校卒 1994年入社
なぜ、作業船で働こうと思ったのですか?
私は元々、ホテルのレストランでウェイターとして働いていました。長時間の仕事の割には給料は高くない。疲れ果てた先輩達の姿。定年まで働き続ける人は10人に1人の世 界でした。先行きに暗さを感じて悩んでいたところ、作業船(風力搬送船=空気圧送船)の船長をしていた父から、「船で働いてみないか?」と声をかけられたのが25歳の時です。 レストランとは全く違う分野の仕事です。合わなければすぐに辞めるつもりでした。正直、作業船での仕事は、同級生と比べて2倍とまではいかないまでも相当の高給でした。 しっかり稼いで、カッコいい車を買って乗り回したいという単純な気持ちが、最初の動機と言えば動機です(笑)。
その時からもう23年、作業船で働いていますね?
そうなんです。今では、この仕事しかできない男になってしまいました(笑)。 乗った以上は人に負けない能力を身につけたいと思いました。舫ロープの編み方からはじまり、甲板のメンテナンスや配管の溶接、次に作業船のバックホウ(パワーショベル)の運転、土砂を排砂管に送り込む搬送機の整備と、一つ一つ段階を踏んで取り組んできました 。 ロープ作りも最初はうまくできず、同僚から「いつまでやってるの?」と言われては悔しくて、倉庫で雨の日に、こっそり練習しました。一つ一つを乗り越えていくうちに、自信になり、面白くなり、ハマってしまいました。長く続ければ続けるほど、仕事の全体像や奥の深さがわかり、仕事の"怖さ"も見えてきます。特に安全面では、そうですね。
安全面で、怖い経験もしたとか?
作業船は、海に浮かんで仕事をします。船の四方向に、船とワイヤーでつながった錨を海底に打って船を動かないようにする必要があります。船にとっては命綱です。 ある日の夜、少し海が荒れそうという情報が入ってきました。荒れるのであれば、船が動かないように、船からさらに遠くに錨を打ち直す必要があります。しかし、もう夕方で暗くなってきて、船の皆もひと段落している。「まあ今のままで大丈夫だろう」と思っていたら、時間が経つにつれ、予想以上に風が強くなり波は大荒れ。「錨を打ち直しておく べきだった...。」との後悔と、「船よ、なんとか耐えてくれ!」という祈るような気持ちで一睡もできませんでした。 結局、事なきを得ましたが、自然を相手にする仕事は甘くみてはいけない。やはり、できる限りの事を尽くしてこそ、船の安全が保たれることを身をもって経験しました。
船長を務める風力搬送船とは、どんな船ですか?
大量の圧縮空気の力で土や砂を排砂管を通して移動させる船です。土砂で埋め立て地や浜辺を造るために使われます。土砂は配管の中を車ぐらいのスピードで動きます。水流 でなく、圧縮空気の力で土砂を移動させるので、土砂を送る際に生じる水の濁りを極力抑えることができるのが、小島組の風力搬送船の特長です。この船には、バックホウやエンジン、コンプレッサー、排砂管に土砂を供給する搬送機などいろいろな設備が搭載されています。特に、搬送機は圧縮空気が外に漏れないように様々な部品が使われてい て、維持管理にとても気を使います。しかし、面倒をみればみるほど、機械はそれに応えてくれて長持ちをし、よく働いてくれます。会社にも貢献できているという自負があります。
小島組の作業船で働いて感じることは?
私たち船員、現場監督など小島組で働いている人たちは皆、「他社の船には絶対に負けない!」という熱い気持ちを常に持って働いています。 それが小島組スピリットです。船の改造や次に造る船はどんな船にしようかと議論が始まると話が止まらなくなり、夜遅くまで熱く語り合います(笑)。 退職した大先輩の人達も熱心に改善策についてアドバイスをくれます。 小島組というチームで同じスピリットも持ち、一つの家族で仕事をしているような感じです。そして、 最前線にいるのは、作業船の船員です。 その現場の意見を本社は取り入れ、実行に移してくれます。 小島組は他の会社がやってない独自の技術にたくさんのお金を投資してきました。たとえば、小島組の風力搬送船は、排砂管の中の土砂を動かすのに純粋に空気の力だけを使います。 他社の船のように動力にポンプを併用していません。 独自の方法を貫くのは、海を汚さず環境を守るためには「自分たちの方式が一番良い」 という信念があるからです。 とてもハッキリしていて魅力的です。働く意欲の源泉になっていますし、これからも、 このスピリットを引き継ぎ、小島組の旗を振り続けていきたいと思います。
楽しみはどんなことがありますか。
一番の楽しみは、船とともに日本全国津々浦々に行けることですね。作業船は、あらゆる港のプロジェクトで活躍します。 私も今まで東北から四国、九州、沖縄まで、日本中のいろいろな現場に行くことができました。旅をしているようなもので、 それぞれの場所が違う気候、海象条件で、風や波の方向が季節や場所によって変わります。 休みもできるだけ希望を聞いてローテーションを組むようにしています。休みの日には、個人の時間を尊重しています。 それぞれの場所の観光地めぐりや温泉めぐり、食べ歩きをしたりしています。 そして、海という大自然の中で、仕事をできることも魅力です。行く先々で釣りもできます。小島組は釣り好きな人が多いですね。 船内で生活をする仕事の日も仕事が終われば、各自がリラックスして自分の部屋でゲームをしたり、 マンガを読んだり自分の時間を楽しめるようにしています。
〜学生の皆様へ〜
旅人のような心を持っている人は、この仕事に向いています。 一日中、机の前に座っていられる人には、あまり向いてないかもしれません。 作業船で仕事をすることは、自然を相手にします。毎日が変化に富んでいて、新鮮です。経験を積めば積むほど、自然の奥深さ、難しさがわかってきます。 漠然とした問題も、仕事をすればするほど具体的な問題として把握できるようになります。 この仕事に終わりがありませんが、船での仕事を毎日続けていけば、積み重ねで自分の成長を実感できます。それを体感してほしいです。 そして、その難しさの分だけ、一生懸命働けば、普通の人よりも多くの給料として自分に返ってきます。 かつての私のように、まずは、この世界に飛び込み、大きな海で思う存分、力を発揮してもらいたいですね。